無線LAN アクセスポイント2.4GHz/800Mbpsの謎仕様の調査結果
おはようございます。
ヨドバシカメラでアクセスポイントを眺めていたところ、パッケージに少し気になった記載がありました。
2.4GHz帯は最大800Mbpsの通信が可能
2.4GHz帯で最大800Mbp?
現状の2.4GHz帯/802.11nの規格上の最大速度は600Mbpsのはず。気になったので、調べてみました。
11n規格上の最大速度
現状2.4GHz帯で、最高速度が最も高い無線LAN規格は802.11nです。(11acは5GHz帯でしか使えません)
11nの規格上の最大速度は600Mbpsです。600MbpsはMCS index 31という条件の時に成立します。下記にMCS index 31の条件を書き出しました。
- 一次変調:64QAM
- Coding:5/6
- MIMO:4 x 4
- 通信帯域幅:40MHz
- ガードインターバル:400ns
2.4GHz 800Mbps通信可能のアクセスポイント
BuffaloやNEC等のハイスペックアクセスポイントですと、2.4GHz帯の最大速度が800Mbpsと記載しているものが市販されています。例えば、以下のようなアクセスポイントです。
なぜ11nの規格値600Mbpsを超えた速度である、800Mbpsが出せるのでしょうか?
webサイトを読み込んだところ、下記のような記載がありました。
800Mbpsは2.4GHz 256QAM対応機器に限ります
どうも256QAMが鍵を握っているようです。
256QAMでどれだけ早くなるのか?
11nの規格は最高速度600Mbps で通信を行う際、一次変調は64QAMを使用します。
64QAMが単位時間当たりに通信できるビット数を計算します。
64QAMは単位時間あたり6bit通信可能
一方、256QAMが単位時間あたりに通信できるビット数を計算すると、
256QAMは単位時間あたり8bit通信可能
したがって、256QAMでは64QAMと比べて8/6倍スピードアップができます。
64QAMを使用した11nの最高速度が600Mbpsです。
スペックに記載がある800Mbpsを導くことができました。
なぜ2.4GHzで256QAMのスペックが登場したのか?
11nの仕様外である2.4GHz 256QAMの仕様がなぜ存在するのでしょうか?
この一次変調に256QAMを使う通信ですが、11acで採用されています。どうも11acの256QAM通信を2.4GHzに流用しているようですね。(11acの通信帯域は5GHz帯のみですので。)
- 11acで既に256QAMを使った通信は実績があるため、比較低コストで実現可能。
- 通信速度アップという、ユーザーにわかりやすいアピールポイント
このあたりの事情で、メーカーが差別化ポイントとして、あえて11nから規格外の仕様を打ち出しているようです。 (無線LANは差別化が難しいですしね。)
2.4GHz帯で256QAMを使った通信は、調べた限り下記のメーカーの無線LANチップで使用できるようです。
特にBroadcomは256QAMだけでなく、1024QAMを使って通信可能のICを出しています。
1024QAMを使った場合の最高速度:600Mbps * 10/6 = 1000Mbps
驚きの1Gbps到達です。製品も出ているようです。
(Broadcomは、256QAM通信をTurboQAM、1024QAM通信をNitroQAMと呼んでいるようです。)
なお2.4GHzで256QAMに対応した無線LAN子機を調べてみましたが、ほぼ存在しませんでした。用途はWDSのようなアクセスポイント間の通信でしょうね。
また11nの仕様外なので、メーカー間の互換性はどうなのでしょうか? 試せる環境にないため分かりませんが、期待しない方が良いと思います。
まとめ
2.4GHzで最大速度800Mbpsの秘密は、無線LANチップメーカーが独自に拡張した256QAMを使った通信によるものでした。
次世代WiFiの11axは、一次変調として256QAM、そして1024QAMを使った通信をサポートします。なので2.4GHz 800Mbpsは、形を多少変えて11axの規格に取り込まれることになりそうです。