アクセスポイントとの距離が離れると、無線LANの速度が遅くなる理由
おはようございます。
無線LANはアクセスポイントからの距離が遠くなると、速度が遅くなりますよね?
無線LANに限らず、スマホでもアンテナの受信本数が少なくなると、通信速度が落ちてしまいます。
今回は、なんでアクセスポイントからの距離が遠くなると、無線LANの速度が遅くなるのか、考えてみます。
例えで遅くなる理由を説明してみると・・・
まずは、例えで説明してみます。
誰かと二人で会話するときのことを、考えてみてください。
お互いの距離が近かったり、周りが静かである場合。このときは、声が小さくても、また多少早口でもスムーズに会話することができます。
しかし、お互いの距離が遠くなるとどうでしょうか?また、周りがうるさい場合はどうでしょうか?
こうなると、声を大きくするか、ゆっくりはっきり喋らないと、会話が難しくなります。
無線LANの場合も、同じことが言えます。
無線LANの場合、声を大きくするが、電波の送信出力を大きくするに相当します。そして、ゆっくり喋るが、通信速度を遅くするに相当します。
ここで、「電波の送信出力を大きくする」は、法律(電波法)による規制があるため、基本的には取ることができません。
よって距離が遠くなった場合、取れる対策は「通信速度を遅くする」しかありません。
このため、アクセスポイントからの距離が遠くなると、無線LANの速度が遅くなります。
数式(フリスの伝達公式)を用いて説明してみると・・・
例えの話を、数式を使って説明してみたいと思います。
今回使用する数式は、シャノン限界とフリスの伝達公式です。
シャノン限界
シャノン限界は、以下のような形で表すことができます。
Cは通信容量(速度)[bps]、Bは帯域幅[Hz]、S/NはSN比です。
今回のように距離が変わるケースの場合、通信速度を上げるためには、 S/N比を上げる必要があると捉えてください。
(帯域幅は、距離が変わっても変わらないため)
シャノン限界については、リンク先の記事でも取り上げているので、興味があれば見てください。
フリスの伝達公式
一方、もう一つの主役であるフリスの伝達公式は、以下のような形で表すことができます。
たくさん記号が出てきました。
各記号の説明は、Prが受信電力、Ptが送信電力、Gtが送信側のアンテナゲイン、Grが受信側のアンテナゲインとなります。
そしてλが波長、Dが送信端末と受信端末の距離になります。
右辺は一杯文字がでていますが、距離D以外は固定値と考えることができます。(送信電力もアンテナゲインも、メーカーが決める値でユーザーはいじることができませんので)
つまりフリスの伝達公式は、「受信電力は送信電力と受信電力との距離の2乗に反比例して小さくなる」ということを表しているにすぎません。
なおフリスの伝達公式は、電波の反射が一切ない環境で成立する公式です。
実際の無線LAN環境では、必ず電波の反射が発生するため、フリスの伝達公式通りにはなりません。
しかし、距離が遠くなれば受信電力が小さくなるという傾向には変わりはありません。
シャノン限界と、フリスの伝達公式を組み合わせる
次にシャノン限界と、フリスの伝達公式を組み合わせてみます。
といっても特に難しい話ではありません。シャノン限界のSの部分に、フリスの伝達公式のPrを代入しておしまいです。
つまり送信端末と受信端末の距離が離れて、Prが小さくなると、通信速度Cも小さくなります。
逆に送信端末と受信端末の距離が近いと、Prが大きいため、通信速度Cが大きくなり、高速で通信することができます。
結論
アクセスポイントとの距離が離れると、無線LANの速度が遅くなるということを、シャノン限界とフリスの伝達公式を使って説明してみました。
無駄に数式を使って、分かりにくくなっただけな気もしますが。。。
言い換えると、高速で通信するためには距離を近くする必要がある。距離が離れても通信できるようにするためには、通信速度を落とす必要があります。
実際の無線LANは、高速通信と広い通信可能距離を両立するため、次のような方法をとっています。
- 電波強度(距離)に応じて、通信速度(リンク速度)を段階的に変更する
よって距離が近いと、リンク速度が高いため通信速度が速くなる。距離が離れていると、リンク速度を低くなるため通信速度が遅くなります。
以上がアクセスポイントからの距離が遠くなると、無線LANの速度が遅くなる理由でした。